問題3 (tomhさん)

問:x^y = y^x (0<x<y)の有理数解(x,y)で、xを小さい順から並べたとき、
五番目の解はなんでしょう。

tomhさんの模範解答
x^y = y^x. (0<x<y) …(☆)
まず、両辺の自然対数をとります。(両辺とも正の値なので、これは可。)
 y ln(x) = x ln(y)
 ln(x)/x = ln(y)/y. …(1)

f(x) = ln(x)/xとすると、f'(x) = (1-ln(x))/x^2となります。
0<x<eのとき、ln(x)<1なので、f'(x)<0.
e<xのとき、ln(x)>1なので、f'(x)>0.
したがって、ln(x)/xは、0<x<eで増加、e<xで減少します。よって、(1)の
x、yは、(x<yなので、)eの両側にあります:0<x<e<y.

ここで、y/x = 1 +1/tとおきます。x<yですから、t>0なる実数です。
(☆)に代入すると、
 x^{x(1+1/t)} = {x(1+1/t)}^x
 x^x x^{x/t} = x^x (1+1/t)^x.
x^xは0ではないので、両辺をx^xで割ると、
 x^{x/t} = (1+1/t)^x
  x^{1/t} = 1 +1/t.

よって、xとyは、
 x = (1+1/t)^t, …(2)
 y = (1+1/t)^{t+1} …(3)
と実数tによるパラメータ表示ができて、これがすべての実数解を表しています。

さて、今、xとyは、共に有理数ですから、y/x = 1 +1/tも実は有理数です。
よって、t自身も有理数になります。そこで、t=n/mとします。但し、
mとnは互いに素な自然数です。このm、nを使うとxは、
 x = (1+m/n)^{n/m} = ((m+n)/n)^{n/m}
と書けます。nとm+nも互いに素となるので、xが有理数であるためには、
nとm+nが、それぞれ、ある自然数のm乗でなければなりません:
 m+n = r^m,
 n = s^m,
 m = r^m -s^m.
r>sに注意しておきましょう。mの式を変形すると、
 m = (r-s) (r^{m-1} +r^{m-2} s + … +r s^{m-2} r +s{m-1})
  = (r-s) ?(k=0,m-1) r^{m-1+k} s^k …(4)
となります。ここで、m>1とすると、?(k=0,m-1) r^{m-1+k} s^kはm個の項から
なり、r>s(すなわち、r>1)ですから、この和は、mより大きくなります:
?(k=0,m-1) r^{m-1+k} s^k > m. すると、(4)より、m>mとなってしまい、
矛盾です。よって、m=1でなければなりません。したがって、t=nです。

故に(2)と(3)は、自然数nにより、
 x = (1+1/n)^n, …(5)
 y = (1+1/n)^{n+1} …(6)
となります。これが、(☆)のすべての有理数解を表すパラメータ表示となります 。

次に、数列x_n = (1+1/n)^nが単調増加であることを示しましょう。そのために
次の式
 (1-a)^n > 1-na (nは2 以上の自然数。0<a<1) …(7)
を帰納法で証明しておきます。n=2のとき、(7)の左辺は、1-2a+a^2となり、
a^2の分だけ右辺より大きくなるので確かに成立します。
n=kのときに(7)が成り立つとすると(1-aが正になることに注意して)、
 (1-a)^{k+1} = (1-a) (1-a)^k > (1-a) (1-na) = 1 -(n+1)a +na^2 > 1 -(n+1)a
となり、n=k+1のときも成り立ちます。よって、(7)はn≧2なるすべての自然数で
成立します。■

いよいよ、数列x_n = (1+1/n)^nが単調増加であることを示します。n≧2として、
x_n/x_{n-1}の振る舞いを調べます。
 x_n/x_{n-1} = (1+1/n)^n / (1+1/(n-1))^{n-1}
       = (1+1/n)^n ((n-1)/n)^{n-1}
       = [(1+1/n)^n (1-1/n)^n] / (1-1/n)
       = (1-1/n^2)^n / (1-1/n)
       > (1-n/n^2) / (1-1/n) (∵ 1/n^2<1なので(7)を適用)
       = 1.
よって、x_n>x_{n-1} (n≧2)、すなわち、x_1<x_2<x_3<…です。
これでx_nの大小関係がわかりました。
(y_n = (1+1/n)^{n+1}の方も同様なやり方で単調減少ということが示せます。
そして、x_n<y_nも示すことができて、2=x_1<x_2<x_3<…<y_3<y_2<y_1=4と
なりますから、x_nもy_nもある値に収束して、その値を"e"と書く、というのが
"e"の定義になるんでしょうね。この問題は、その逆を辿っているともいえます。


ということで、下から5番目のxの値は、x_5で具体的には、x_5=7776/3125です。
このとき、yは(y_5=)46656/15625です。

 ∴ (7776/3125, 46656/15625).

問題にも書きましたように、この問題は割と有名で、例えば雑誌「数学セミナー 」
(日本評論社)の名物連載”エレガントな解答をもとむ”にも大昔に出題されて
いるようですし、手に入りやすい書籍でいえば、
[1] 遠山啓, "[新版]微分と積分 その思想と方法" (日本評論社 2001)
  (旧版は1970年)
に載っています。(上記解答は[1]を参考にしました。)

tekiさん
x~y=y~x において、x、yはともに有理数であるから、y=ax(a>1
の有理数)とおける。
これを与式に代入して変形すると、
(x~(a-1))~x=a~ x ・・・@ となる。
指数関数は、底>1で単調増加であるから、@式は、
x~(a-1)=a ・・・A と等価である。
Aより、x=a~1/(a-1) ・・・B が得られる。
ここで、a=b/c (b,cは互いに素な正整数)とおくと、
x=(b/c)~(c/(b-c))・・・C となる。
ここで、xは有理数であるから、(b-c)/cは正整数である。
よって、c/(b-c)=n (nは正整数)と置くと、
これをC式に代入して、
x=((n+1)/n)~n・・・D (n=1、2,3........) となる。
D式はnに関して単調増加であるから、xの小さい方から5番目の値は、n=5
の時
x=(6/5)~5 となる。

モルモット大臣さん
まずx^y=y^xはともに正であることからこの両辺の対数をとりylogx=xlogy
この式を変形してy/x=logy/logxここで(0<x<yで x,yともに有理数)より
y=tx (t>1)とおくとxt/x=t=logtx/logx=(logx+logt)/logx=1+logt/logx
よってt=1+logt/logxさらに変形してt-1=logt/logxこれから(logt)/t-1=logx
logt^(1/t-1)=logx以上よりt^(1/t-1)=x、ここでt-1=a>0とおくとx=(a+1)^1/a
xが有理数であることからx=(a+1)^1/aが有理数となるためには1/aは整数である。(よ
ってa=1,1/2,1/3.....1/n, nは自然数)
そこで関数 x=(a+1)^1/aの増減を調べることにする。
まず 明らかに正であるx=(a+1)^1/aの両辺の対数をとり、logx=1/a×log(a+1)
ここで両辺の微分を考え1/xdx=[(-1/a^2)log(a+1)+1/a×1/(a+1)]da よって
dx/da=x[(-1/a^2)log(a+1)+1/a×1/(a+1)]=x/a[1/(a+1)-log(a+1)/a]
ここまでで[1/(a+1)-log(a+1)/a]=1/a(a+1)[a-(a+1)log(a+1)]に注目して
a-(a+1)log(a+1)=pの部分の2次微分を考えると
dp/da=1-log(a+1)-(a+1)/(a+1)=-log(a+1)<0(a>0より)であるよって一次微分の部
分は単調減少であり、[1/(a+1)-log(a+1)/a]=1/(a+1)-log(a+1)+logaは
a→+0の時には-∞となることからa>0では常に負となる。
よって x=(a+1)^1/aも単調減少である。このことからaがa=1,1/2,1/3.....1/n の順
にxは大きくなることがわかる。よって小さい方から5番目の解xはa=1/5のときである

以上から求めるx=(1/5+1)^5=6^5/5^5=7776/3125この時、y=tx=(a+1)xであるからy=(
1/5+1)6^5/5^5 =6/5×7776/3125=46656/15625
答え   x, y= 7776/3125, 46656/15625

老眼鏡さん

QPerさん

y=kx ( k>1, kは有理数)とおくと、x^(kx)=( kx )^x
x^xで割ると、(x^(k-1))=k^x
x^(k-1)=k
x=k^(1/(k-1))
k=q/p  ( q>p, p,qは互いに素である自然数 )とおくと、
x=(q/p)^(p/(q-p))
q-p=r とすると、
x=((p+r)/p)^(p/r) …(*)
ここで、p,qは互いに素だから p/r は自然数とはならない
また、分子(p+r) と分母 p との差が r であるような数の r 乗根が r≧2 の範囲では
存在しないことを次のように証明した。 
1^r,2^r,3^r …  は r≧2 より明らかに1^r と 2^r の差が最小となるのでその差と r の大小を調べる
r=2 のとき、差は3となり成り立つ
rのとき2^r-1^r>rが成り立つと仮定する
2^(r+1)-1^r>2(r+1)-1>r+1
r+1のときも成り立つので、数学的帰納法により証明された
よって(*)は r≧2 の範囲では有理数をとらない
つまり r=1のときであり、xは単調減少するから、
求める5番目は p=5 のときであり、(6/5)^5

巷の夢 さん
今x/y=kと置くと、kは0より大きく、1より小さい。
この式を使いx^y=y^xを変形すると、x=k^k/(k−1)となる。
そこでkの値を1/2、1/3、2/3、1/4、3/4と分母を大きくしていくと規則性がみつかり、
5番目に小さいものはk=5/6の時 (6/5)^5=7776/3125となる。